AAA規模のサードパーソンビュー(三人称視点)ゲーム背景の作り方で押さえておかなければいけないことがあるのでそれらを紹介していきます。(画像などは随時追加していきます)(記事をあとで分割してそれぞれをもっとわかりやすく書くかも)
サードパーソンビューというのは三人称視点ゲームのことで上の画像のようにキャラクターを俯瞰した視点でプレイするスタイルのゲームのことをいいます。
前景にくるのは常にキャラクター
絵作りの基本として 前景 中景 遠景 という構成要素を念頭において作りこみをしていくわけですが
サードパーソンビューゲーム(以下TPVGで表記)では常にキャラクターが前景に置かれるため、通常の絵作りとすこし違った意識が必要です。
通常の絵作りでは前景に置かれるオブジェクトは大きさ、スケール感の比較に使われるものがおおいですが、
TPVGでは主に人体という一番スケール比較にわかりやすいオブジェクトが常に画面の中央におかれるため、
前景の役割を果たすアセットを置く必要はあまりありません。逆に言うとプレイヤーの導線にアセットはおけなくなります。
(背景制作への影響は基本的にないものと考えますが、ゲームUIが画面の情報量をあげてリッチにしてくれる効果が一枚の絵としてあります。前景のさらに手前の景観としての効果はありますがこれは背景には関係ないので割愛、話が哲学的になるので。)
一番こだわるのは地面
サードパーソンビューゲームにおいて一番よく映る箇所は地面なのでそこを丁寧に作成する意識が必要です。
どの媒体でも一番よく映る場所を一番作りこむわけですがサードパーソンビューゲームの場合 地面が映る範囲として一番多くを占めるのでここをこだわります。
足跡や車のタイヤ痕 崩れた瓦礫 植物の植生 起伏の大きさなど 地面に映ってるものからより多くプレイヤーはそのロケーションの状況を読み取るので地面からそのロケーションたらしめる要素を表現してみましょう。
映像制作ではカットによりきですがサードパーソン視点のゲームほど地面を意識することは少ないので、
TPVG背景制作においては地面への意識を強めに向けてもらえればと思います。
レベルデザインと背景美を調和
ゲーム背景では体験としての背景制作の意識が必要です。
背景アーティストは最低限のレベルデザインの知識があると 制作過程でのディレクターやレベルデザイナーとのコミュニケーションの観点からいっても仕事がはかどることが多いです。
スタジオ毎に制作フローは異なりますので一概にいえませんが レベルデザイナーがしっかり美しさも計算したレベルデザインができるとも限りませんし
背景デザイナーがおもしろさとプレイヤーの導線を計算した背景を作れるとも限りません。
それぞれのロケーションに応じたインタラクションを計算して 体験として魅せることのできる背景制作を心がけために多少 ゲームそのものの見分をふかめて
単純に美しくする背景美術に加えてワクワクするようなおもしろさをつくっていくことがゲーム背景に求められます。
他セクションとの調和
ゲーム背景も基本的な絵作りの考え方は一枚絵や映像制作の場合と同じです。
ただしゲームの場合は加えて、バトルチーム カットシーンチーム モーションチーム レベルチーム サウンドチームなどさまざまな͡異なるセクションと調和しながら制作をしていかなければいけません。
たとえばキャラクターの他に演出で巨大なモンスターをよびだす技などがあ場合、あるいは技を繰り出す際キャラクターが非常に高いところまでジャンプする場合などは、天井の高さがそのキャラクターより低いとダメなので
全ロケーションにわたってその高さの天井を維持しなければならないなどバトルを意識したルール/レギュレーションが登場してきます。
梯子の太さやドアノブの位置など 決められた繰り返し使用するモーションに準拠したアセット制作をしなければなりません。
また、最近のゲームでは映画のようにカットシーンを加えるものが非常におおくあり、映像作りに求められるような絵作りも従来通り大切にしていかなければならなりません。
具体的な例としては、まず地面の位置と基本的なアセットの配置を先にきめてからカメラとキャラクターの動きをきめるためにカットのチームにデータを渡す必要があります。作りこみの前に絵の構図を決めてしまうわけです。
これをするともう基本的に背景の配置が変えられなくなるので、はやめに絵としての急所となる部分をきめうちして、完成図を想像できる状態にしておかなければいけません。
またレベルデザインには非常に多くの意味がふくまれますが、 例えば宝箱が見える位置とそこにたどり着くまでの設計 ボスとの闘いのための舞台づくり 戦いの最中で配置されるものが変わる など背景だけで独立している箇所はほぼなく、背景を作ることそのものがレベルデザインと密接にかかわっています。
ただし、だからといって背景があれもこれも考え抜いて作りすぎる必要はなく 良い舞台を作成したらあとはカットシーンチームやそれぞれのチームがそれを利用してそのロケーションにあった演出をしてくれるので必要以上に考えすぎるて設計する必要はありません。それぞれのチームの作業内容を頭に入れて 破綻しない程度の配慮をしましょうということです。
処理負荷に関して
どのプラットフォームにビルドするかで仕様がまったく変わってきますが、背景アーティストはアセット制作の際 常に処理負荷を意識しなければいけません。
例えばAAAのグラフィックスとボリュームのゲームを快適に動かすとして
見た目上の美しさをキープしながら軽いデータにしていかなければいけないため、ゲーム特融の技術が処理負荷低減作業が必要になります。
具体例をあげると、DIFFUSE ROUGHNESS NORMAL AO の4つのテクスチャを使用していた場合
ROUGHNESS と AOのテクスチャのみサイズを小さくすると見た目があまり変化せずデータサイズを小さくすることができます。
モデルそのものの頂点数もなるべく減らし、細かい凸凹はノーマルマップで表現しなるべくデータサイズを小さくしてゲームやロケーションに最適なデータサイズを探っていきます。
これらはスタジオやプラットフォームによって許容範囲がまったく異なるため、プロジェクトのリードアーティストはエンジニアと相談しながら適切なサイズを決めていくことになります。
ハードウェアのスペックの進化とソフトウェア上での最適化のロジックの進化により処理負荷を考えなければいけない領域がすこしづつ小さくなってきて、ストレスなくアートに集中できるように進化しています。
PS5のスペックもかなり期待できるようなので、今後 少しでも快適に背景制作ができる環境ができてくるのが楽しみですね。
クオリティにかけられる時間
ゲームはデバックにものすごい時間がかかるのでスケジュール作成の際はそこを意識しないといけません。
ゲームはテレビシリーズのCGなどよりははるかに時間をかけて作れるし映画よりも納期自体は長いことが多いですが、
デバックや最適化にかかる時間が膨大なのでアート的なクオリティのみに集中できる時間は想像以上にすくないと考えてかかるべきだとおもいます。
おおまかには10あるとして 設計2 制作4 デバック最適化 4 くらいで見積もるくらいの意識が必要だと思っています。
フローが確立されていて先が見えている状態であればもうすこし調整できるかと思いますが
挑戦的なことをする場合はデバックにかなりの時間がとられる覚悟が必要になります。
TPSとFPSが混ざってる場合
TPSとFPSが混合したゲーム あるいは視点切り替えが自由な場合 どちらをより意識するべきかはプレイヤーがどちらを選びやすいか ケースバイケースで考えて 作りましょう。
守るべきポイントとしては キャラクターにたいして 背景の比率が間違っていなければ ゲーム背景として破綻することは少なく またデバック時 念入りにTPS時とFPS時で見え方の違いを比べてみて問題がないか
何度でもチェックして 片方の場合でうまく背景が機能してないときなどが発生するときがあるのでそういった部分をひとつひとつしらみつぶしに直していくようなことが必要なケースがあります。
狭い室内では広大なマップ用に配置されたカメラ位置だと快適に動作しないので、その場所だけカメラの位置とカメラスピード 画角などを調整してもらうなどの工夫が必要になってきます。
とはいえ少々カメラ位置が変わる程度であれば見た目の美しさに大きな変化はないので、TPSからFPSに切り替わる場合でカメラの画角を調整すれば問題ないことが多いです。
まとめ
- 処理負荷を意識したアセット制作をする
- 他セクションあるいはゲーム全体への配慮した作業が必要
- 体験としての背景を考える(レベルデザイン)
- 前景はキャラクターが占める
- 一番映る地面への意識をおろそかにしない
- デバッグと最適化に時間がかなりかかる
以上がこの記事の内容でした。
大まかにゲーム背景制作で意識すべきことを紹介しましたが、これからも気づいたことがあれば加筆修正して情報の質をあげていこうとおもっています。